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思ひで(7)運命の(?)出会い

D先生に新しいバンドに誘われた。
あたしにとって初めてのバンド体験。

普通は、バンド体験をし、
そして仕事をしていく・・・
という形なのだろうが
あたしの場合は、それを逆流した形だ。

バンド経験がない、
その事が心の奥でひっかかっていた。

仕事はちぐささんと一緒にしていたものの
あたしは中身のない人形のようなものだ。

また、コーラスパートと聞き、
あたしは二つ返事でバンド参加をOKした。

ドラム、ベース、ピアノ、キーボード、ギター
ボーカル、そしてコーラス。

曲調はポップス、バンドメンバーは
プロに近い人たちばかりで、演奏は申し分ない。

殆どがあたしより年上で、
ここで、あたしはまた、わからなくなった。

どのように接していいか
わからなかったのである。

まず、音楽用語が全くわからないあたしは
皆が何を話しているのか、理解できなかった。

そして、そんなあたしに更なる追い討ちが。


リードヴォーカルの人が辞めてしまったのである。

メンバーの皆は新たなリードヴォーカルを探すまで
私が、リードヴォーカルを歌え、というのだ。

臆病なあたしは一旦断わるものの、
結局、断わりきれず歌う事になる。

それからは、いつもひとり悩んでいた。
「どうして、うまく歌えないんだろう」

ポップスで、難しい曲じゃないはずなのに
どうもしっくりこない。
いい感じに歌えない。

一番乗りしたスタジオで、
ぽつんと椅子に座り、ブルーになっていた。


その時、年上の男性が入ってきて、
話しかけてくれた。

知らない人だったので、
どうしてそんな話をする事になったか、
覚えていない。


「このバンドで歌うのは大変だよね。」
そんな風に話しかけてくれたのだったと思う。

「自分が未熟だから、うまく歌えないのだと思う」
というと、

その人は

「そんなことないよ。できあがった楽器の中に
新しくヴォーカルが入っていくことは、とても大変だよ。」
と、いってくれた。

「がんばってね。」
そういって、その人は出て行った。

「なんて、やさしい人なんだ。」
つらかったあたしには、本当に嬉しい言葉だった。

そう、現在のPORT OF CALLのピアノ
ギリさんと初めてかわした会話。


ギリさんとあたしとの出会いはこの時だった。

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